一人暮らしを始めるときや、新しい土地に引っ越すとき、物件を決める大きな基準となるのが家賃です。
個人の懐事情はもちろんのこと、譲れないこだわりがあるなど、様々な判断基準がありますが、毎日の暮らしに直結する収入に見合った家賃相場を知っておくことはとても大切です。
今回は、賃貸家賃の目安と引っ越しの際にかかる初期費用の相場について解説します。
自分の給料に対する家賃の目安
これまで「家賃は手取りの3割が妥当」だと言われてきました。
ですが、これは日本経済が成長を続けていた好景気時代に当たり前だった「年齢に比例して給料が上がる」「会社から家賃補助が出る」などを前提にが成り立っていました。
実際に最近の傾向を調べると「3割は高い」など、否定的な意見も見られるようになってきました。
昨今では、30年続くデフレや給料が上がらない現実、また働き方の多様性など、社会の変化が家賃に対する考え方に影響していると考えられます。
では実際に、収入に対してどれくらいの家賃なら無理なく暮らすことができるのか考えていきましょう。
収入と手取りの違い
まずは収入と手取りの違いについて理解する必要があります。
収入とは総支払額のことで、手取りとは「総支給額」から税金や社会保険・雇用保険などの額を差し引いて口座に実際に振り込まれる額のことです。
なので、家賃を考えるときは必ず手取り額で計算するようにしてください。
また、ボーナスや会社の福利厚生でもらえる家賃補助など企業の経営状況や自分の転職などで無くなる可能性があるものは除外して考えます。
固定費
家賃以外で毎月必ず必要となる費用がどれくらいあるのか、細かいものもしっかりと計算しておきます。
水道光熱費や通信費(ネットやスマホ代)などが思い浮かびますが、他にも車やバイクを所有している場合はローンや駐車場代、定期的に購入しているもの(化粧品やコンタクトレンズなど)、定期的に支払う費用(ジムの会費やサブスクリプション)があります。
毎月洋服は買わないけど季節ごとにまとめて買う場合も月割にして考えておくことが大切です。
また、予期せぬ収入減や支出増は誰にでも起こりうることです。いざという時に暮らしを守るための貯蓄も固定費で考えておくことをオススメします。
家賃以外の住居費
見落としがちなのが家賃以外の住居費です。毎月かかる管理費や共益費の他、火災保険料は2年ごとの更新です。
また多くの賃貸物件では同じく2年ごとに更新料がかかる場合もあるため、これも家賃を考えるときに必ず計算に入れておきましょう。
手取り3割で計算した適正家賃
手取り額と支出額を計算してから家賃を決めることが重要です。
固定費や生活スタイルから家賃の割合を調整し、自分の適正家賃を知っておきましょう。
仮に手取り3割で家賃を計算した場合、以下のようになります。
手取り額(月収) | 家賃の目安(3割) |
---|---|
150,000円 | 50,000円 |
200,000円 | 60,000円 |
250,000円 | 75,000円 |
300,000円 | 90,000円 |
例えば、「住環境の質を下げてでも貯金を増やしたい」という方は家賃の割合を下げ、逆に「住環境にこだわりたい」と家賃の割合を上げるなら、生活費を減らす努力が必要です。
自炊で食費を抑えたり、外食の回数を減らして交際費を削減するなど、固定費を見直すことで継続的な節約効果が期待できます。
引っ越しにかかる初期費用の相場
新しく賃貸物件を借りるときに見落としがちなのが、初期費用や引っ越し費用です。「引越し貧乏」という言葉が存在するほど、大きな出費となることが多いです。
ここで、一般的な家賃に対する初期費用や広さ別の引っ越し費用を見てみましょう。
初期費用の相場
例えば、家賃6万円であれば約24~36万円かかると考えておきましょう。
これは賃貸物件に関わる費用(敷金・礼金・仲介手数料)のほか、家具家電を揃えるための費用や、引っ越し費用も含まれています。
また「家賃の4~6ヶ月分」はあくまで目安の金額で、物件や引っ越しの条件によっては、それより高くなることも、安く抑えることも可能です。
初めての一人暮らしを前に、高額な費用を払うのはできるだけ避けたいもの。
「敷金礼金ゼロ」「仲介手数料無料」という物件を選ぶと、入居のための初期費用を抑えることができます。
最初にかかる費用を少しでも抑えることができれば、一人暮らしを始めやすくなり、引っ越し後の新生活も余裕を持って過ごせるようになります。
契約時に必要な費用
賃貸の契約する際に以下の費用がかかります。
項目 | 費用の相場 |
---|---|
敷金 | 家賃の約1ヶ月分 |
礼金 | 家賃の約1ヶ月分 |
仲介手数料 | 家賃の約0.5ヶ月分 |
日割り家賃 | 入居日による(家賃÷入居月の日数×入居日数) |
前家賃 | 家賃1カ月分が目安 |
管理費、共益費 | 家賃の約0.5~1ヶ月分 |
賃貸保証料 | 家賃の約0.5~1ヶ月分 |
鍵交換費用 | 2~3万円 |
火災保険料 | 2万円(2年更新) |
消毒料 | 1~2万円 |
上記のように賃貸の契約時は様々な費用が発生します。
ですが、礼金や仲介手数料は交渉することができ、火災保険料や消毒料も個人的に別の業者と契約することで安く抑えられます。
不動産会社から提示された内容で即決するのではなく、他の方法を検討することも大切です。
その他の費用
家具家電を一から揃えると一人暮らしでも20万円程かかります。なので、アウトレットや中古品などを探して安く抑えることも良いでしょう。
また、家具家電と同様に初めての一人暮らしでは、寝具、収納棚や収納用品、また洗濯用品やバス用品、キッチン用品などの生活必需品も買い揃える必要があります。
ほとんどのものがホームセンターや100円ショップで扱われており、安く購入することができますが、これらの日用品をゼロから一式揃えようとする場合は、数万円の費用が必要になります。
引っ越し費用
移動距離や持って行く荷物の量、また引越し業者によって金額は大きく変動します。
今はネットで必要事項を入力すれば簡単に数社で見積もりが取れるサイトもたくさんあります。
見積もりサイトは、自分の引っ越しにどれくらい費用がかかるのか大まかに理解できるためオススメです。
初期費用が足りないと引っ越し後の生活に大きく影響するため、引っ越しに必要な費用を細かく把握することが重要です。
特に生活用品は実際に暮らし始めたあと「あれもこれも」と必要なものが出てくることがよくあります。しっかりと下調べをして余裕を持った予算を考えておきましょう。
家賃を抑えるポイント
同じエリア・広さの物件でも条件によって家賃は細かく変動します。次に家賃を抑えるポイントについてご紹介します。
家賃を抑える方法は以下の5つです。
- 駅から徒歩15分以上離れた物件を探す
- 急行快速が停車する隣の物件を探す
- 築年数が古い物件を探す
- 繁忙期を避けて物件を探す
駅から徒歩15分以上離れた物件を探す
家賃を低く抑えたいのであれば、駅から徒歩15分以上離れた物件を狙うのが有効です。駅から離れるごとに家賃は下がり、広くなる傾向があります。
徒歩20分の道のりも自転車を使えば5分程度です。健康のための運動だと捉えれば、長続きしやすくなります。
急行快速が停車する隣の物件を探す
定期代と家賃を比較して、急行や快速が停車する隣の駅を狙うのもポイントです。
急行や快速が止まる駅周辺は人気も高く、家賃も高い傾向にあるため、隣駅には掘り出し物件が見つかるかもしれません。
また、複数の公共交通機関が通っている駅周辺も人気の立地で、家賃が高くなる傾向があります。
好条件の立地の少し隣の場所で物件を探すと良いかもしれません。
築年数が古い物件を探す
新築や築浅物件はどうしても割高になります。
築年数の目安は10年未満がひとつの基準になるため、敬遠されがちな築年数10年以上の物件まで条件を広げるのも良いでしょう。
昭和56年6月以降に建てられた建物であれば新耐震基準となるため、内装がフルリフォームされている条件を加えればデメリットになりません。
ですが、内見の際にきちんとお部屋の状態を確認する必要があります。
以下の記事では内見の際にチェックすべきポイントをご紹介してるので、ぜひ参考にしてください。
繁忙期を避けて物件を探す
新生活が始まる人の移動が多くなる3月に向けて、1月頃から不動産会社は繁忙期になります。
多くの人が引っ越しする3月には、物件の需要も必然的に多くなり、賃料も高くなる傾向があります。
物件の需要が高い時期だと家賃交渉もしづらくなるので、引っ越しの時期を調整できるのであれば、繁忙期を避けて引っ越しすることをオススメします。
まとめ
今回は、自身の手取り額から考える適正家賃と初期費用の相場をご紹介しました。
基本は手元にいくら残るか、残したいのかをしっかりシミュレーションした上で、家賃を決めるのが大切です。
生活基準に対して家賃が高くなってしまった場合、趣味にお金が使えない、生活の質が落ちる、貯金が思うようにできなくなるなどの悪影響が出てしまうかもしれません。
ただ、家賃を下げることだけを目的に、エリアや部屋の広さ、設備、通勤通学の便、周辺環境など、自分の暮らし方に合わない物件を選ぶのは避けたいと思います。
不満が溜まり、すぐにまた引っ越しをすることになれば費用もたくさんかかってしまいます。
自分に合った節約術の実践や収支の整理をしながら、適切な家賃と暮らしのバランスが取れる住まいを探しましょう。