日本で最も一般的な住宅構造は「木造」です。特に、賃貸の木造と聞くとアパートを思い浮かべる方も多いことでしょう。
では、その木造住宅とは、そもそもどのような建物のことなのでしょうか。また、木造住宅で得られるメリット・デメリットは何があるのでしょうか。
今回は、これらを含めた木造住宅について詳しく解説します。
また、マンションやビルなどに使用されている鉄筋コンクリート造や鉄骨造との違い、基礎知識もあわせてご紹介します。
賃貸の木造住宅とは?
賃貸の木造住宅とは、建物の柱や壁といった主要な部分に木材を利用した建築方法の住宅です。
古くから日本の建築物に使用されてきた構法で、神社仏閣を含めた数多くの建物に使用されており、鉄骨系の住宅が増えてきた現在においても日本人に根強く支持されています。
その証拠として、平成30年に総務省がおこなった調査「住宅・土地統計調査(5年ごと)」では、日本の住宅の92.5%が木造であることがわかっています。
木は温かみを感じ落ち着きのある素材なので、環境に負荷をかけない省エネルギーな原材料でもあります。
ですが、なぜここまで鉄骨系の住宅よりも支持されるのでしょうか。
そのように支持される理由やメリットについて解説します。
賃貸の木造住宅の4つのメリット
賃貸の木造住宅のメリットは以下の4つです。
- 家賃・管理費が安い
- 家具を配置しやすい
- 通気性と調湿性が高い
- 耐火性に優れている
順番に解説します。
家賃・管理費が安い
賃貸の木造住宅は、家賃や管理費が安い傾向にあります。
それは、鉄骨系の住宅よりも材料費が安く、工期も短いため、建築コストを抑えることができ、それが家賃にも反映されているからです。
また、木造住宅のほとんどが2階建て以下のため、エレベーターを設置しない場合が多く、共用施設も少なくすむことから、管理費も低く抑えることができます。
家具を配置しやすい
賃貸の木造住宅は、家具を配置しやすい物件です。
鉄骨系の住宅は、部屋の隅に柱が出っ張っていることが多く、デッドスペースができてしまいますが、木造住宅にはそれがありません。
そのため、置きたい場所に家具を配置しやすく、レイアウトの自由度が高くなります。
また、天井や壁にも梁や柱の凸凹がなく、部屋の圧迫感も軽減されるでしょう。
通気性と吸湿性が高い
木造住宅は、通気性と吸湿性が高い傾向にあります。木は環境に優しく通気性のある素材で、湿気を吸収します。
鉄骨系の住宅は気密性が高い分、部屋に湿気がたまりやすく、冬場は結露の原因になることがよくあります。
ですが、木造住宅は風通しも良く抗菌性もあるため、窓枠などに水滴が溜まったり、それが原因でカビが生えるということもほとんどありません。
耐火性に優れている
実は、木造住宅は火に強く耐火性に優れています。
建築に使う木材は断面が厚いため、表面に着火しても表層に炭化層ができ、それが断熱層の役割を果たすため、燃焼の進行は遅く、燃えても短時間で崩れることがありません。
一方の鉄は、薄く強い代わりに、火や熱によって短時間で温度が上がり変形して折れ曲がりやすいため、木造よりも倒壊しやすいといわれています。
賃貸の木造住宅の4つのデメリット
メリットがある一方で、デメリットも存在します。
次はデメリットについて解説します。賃貸の木造住宅のデメリットは以下の4つです。
- 音が漏れる
- 冷暖房効率が下がる
- 害虫の被害を受けやすい
- 耐震性に劣る
順番に解説します。
音が漏れる
賃貸の木造住宅は遮音性能が低く、音を通しやすい性質を持っているため、音が漏れやすいです。
木造は、鉄骨系に比べると壁が薄く気密性が低いため、壁や床の振動がそのまま隣接する部屋に伝わります。
これが、生活音などの音漏れの原因です。
隣接する部屋から騒音が響くということは、自分が騒音を与えてしまう側になってしまうことも考えられます。
ご近所トラブルを回避するためにも、壁に貼るだけの防音シートや敷くだけのクッションタイルなどを上手に活用し、防音対策をしておくと良いでしょう。
冷暖房効率が下がる
賃貸の木造住宅は、通気性が良い反面、冷暖房の効率が下がる傾向にあります。
木造住宅は、その構造上、窓枠や天井、床や壁に隙間が空いてしまい、目に見えないちょっとした隙間から空気が出入りします。
その影響で、夏は外の熱気が室内に入り込み、冬は寒い空気が室内に入り込むため、冷暖房の効きが悪くなってしまいます。
そのため、夏はエアコンをつける前に窓を開けて部屋にこもった熱を外に逃がし、冬は防寒カーテンを活用するなどの対策をオススメします。
害虫の被害を受けやすい
賃貸の木造住宅の心配事として、シロアリの害虫被害を受けやすいという点があります。
特にシロアリは土台から腐食させてしまうので、倒壊までしなくても耐久性が下がることがあります。
また、白アリは「木」を好み、木材が主なエサである上に、湿った場所や暗い場所も好みます。
そのため、シロアリの好む環境を作らないこと、侵入経路になるベランダや玄関に木材やダンボールを置かないようにするなどの対策が必要です。
高温多湿な室内にならないように換気などもしっかりと行い、シロアリの侵入を防ぎましょう。
耐震性に劣る物件もある
昭和56年6月の耐震基準の改正以前の物件は、耐震性に劣るケースがあります。
一般的に、住宅の耐震性は建築基準法で定められた基準に沿って建てられています。その法改正が、昭和56年6月に耐震性を高めるために行われました。
耐震性基準の改正により、構造や工法に関わらず、震度6強〜7に達する地震であっても家が倒壊や崩壊しないように設計することが定められました。
そのため、法改正前と法改正後では、耐震性にかなりの差があるため、賃貸の木造住宅を選ぶ際は築浅物件を探すと良いでしょう。
アパートの構造に多い木造住宅は日本人に根強く支持されていますが、近年は鉄筋コンクリート造のマンションの需要も高まっています。
ですが実際には、アパートとマンションには正式な定義はありません。
ただし、一般的にはアパートは2階以下の木造、マンションは3階以上の鉄筋コンクリート造のような区分で認識されています。
そこで次は、マンションに多い鉄筋コンクリート造とはどのような構造なのかご紹介します。
賃貸の鉄筋コンクリート造とは?
鉄筋コンクリート造とは、柱や梁などの主要構造部が鉄筋とコンクリートで構成されている建物のことを呼びます。
構造欄には、Reinforced Concreteの頭文字を取って「RC造」と書かれることもあります。
建築方法は、主に鉄筋を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めて作る方法です。
鉄筋コンクリート造(RC造)は、鉄筋とコンクリートで形成するため比較的自由に設計でき、耐久性や耐震性、耐火性、遮音性にも優れている工法です。
特に、主要素材のコンクリートは不燃材料であるため、高い耐火性があり、万が一火災が発生したとしても主要構造部まで燃えることはありません。
強度が強いため、近年はマンションやビル、一般住宅など、さまざまな建物で採用されている工法です。
賃貸の鉄筋コンクリート造(RC造)の4つのメリット
近年、さまざまな建物で採用されている鉄筋コンクリート造(RC造)ですが、鉄筋コンクリート造にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
まずは、メリットから解説します。賃貸の鉄筋コンクリート造(RC造)のメリットは以下の4つです。
- 遮音性に優れいている
- 耐震性・耐久性が高い
- 高い耐火性を備えている
- デザイン性に富んでいる
一つずつ解説します。
遮音性に優れいてる
鉄筋コンクリート造(RC造)は、遮音性に優れています。
基本的に、遮音能力は重い材料を使用するほど高いと言われています。
そのため、壁や床など圧倒的重量のコンクリートを使用する鉄筋コンクリート造(RC造)が、高い遮音性を持つことが理解できます。
特に、低音を遮断する能力が高いため、室内に出力の大きいサラウンドスピーカーを置きたい方は、鉄筋コンクリート造(RC造)を選ぶと良いでしょう。
耐震性・耐久性が高い
鉄筋コンクリート造(RC造)は、その性質上、高い耐震性を誇ります。
鉄筋は引っ張る力(引張力)に強く、コンクリートは圧縮に強い特性を持ちます。
そのため、地震発生時の縦揺れ・横揺れなど、様々な振動により建物にかかる負荷を分散しやすく、ダメージを最小限に抑えます。
また、鉄筋コンクリート造(RC造)の法定耐用年数は47年なので、適切なメンテナンスをすれば、耐久年数は約100年以上にもなるといわれています。
高い耐火性を備えている
鉄筋コンクリート造(RC造)の主材料のコンクリートは不燃材料のため、耐火性が非常に高いです。
また、鉄筋コンクリート造(RC造)は気密性も高いため、延焼の恐れが低い点もメリットの一つと言えるでしょう。
マンションのような集合住宅では、近隣を含め、いつどの部屋で火事が発生するか分かりません。
だからこそ、高い耐火性を備えている鉄筋コンクリート造(RC造)の部屋に住むことは、大きな安心材料となります。
デザイン性に富んでいる
鉄筋コンクリート造(RC造)は、コンクリートを流し込んで作る工法のため、どのような形にもアレンジすることができ、デザインの自由度が高いのが特徴です。
そのバリエーションは豊富で、モダンな物件やデザイナーズマンション、仕切りのない部屋、個性的な間取りなど、さまざまです。
設計の自由度が高いからこそできる思い切ったデザインのマンションは、外観から内装までこだわる方には最適な構造です。
賃貸の鉄筋コンクリート造(RC造)の2つのデメリット
では、次にデメリットについて解説します。
賃貸の鉄筋コンクリート造(RC造)のデメリットは以下の2つです。
- 家賃が高い
- 結露やカビが発生しやすい
順番に解説します。
家賃が高い
鉄筋コンクリート造(RC造)は、家賃が高い傾向にあります。
鉄筋コンクリートは、材料費が高いだけではなく、鉄筋にコンクリートを流し込むなどの作業工程に手間がかかるため、人件費がかかる上に工期も長くなります。
建築にかかるコストは家賃にも反映されるため、家賃も高くなります。
家賃を抑えたい人は、鉄筋コンクリート造(RC造)以外の構造住宅を選ぶ方が良いでしょう。
結露やカビが発生しやすい
鉄筋コンクリート造(RC造)は、結露やカビが発生しやすいです。
全体がコンクリートで構成されている鉄筋コンクリート造(RC造)は、気密性が高い反面、換気をしないと通気性が悪くなります。
それが結露やカビの原因になります。
ただし、最近のマンションは24時間換気システムなどが導入されているため、通気性は良くなりつつあります。
ですが、まだまだ意識的に換気を行った方が良いでしょう。
賃貸は木造と鉄筋コンクリート造(RC造)どちらがおすすめ?
木造と鉄筋コンクリート造(RC造)のメリット・デメリットがわかったところで、どちらを選べば良いのか迷う方も少なくありません。
そこで次は、賃貸では木造と鉄筋コンクリート造(RC造)のどちらがオススメなのかを解説します。
木造住宅と鉄筋コンクリート造(RC造)住宅は、異なるメリット・デメリットを持っています。
そのため、一概にどちらがオススメということではなく、住む方に適しているかどうかを考慮しながら選ぶことが大切です。
今回は、生活する上で重要な2つのポイントに注目したオススメの構造をご紹介します。
- 生活音を気にしたくない
- 家賃を抑えたい
順番にみていきましょう。
生活音を気にしたくないなら鉄筋コンクリート造(RC造)
生活音を気にしながら生活したくない方は、防音性が高い鉄筋コンクリート造(RC造)が良いでしょう。
小さい子供がいる家庭は、子供の足音や遊び声の騒音が近隣トラブルの原因に発展しやすいため、防音性に優れている鉄筋コンクリート造の物件をオススメします。
また、一人暮らしの場合でも、安全面で心配したくない方は、鉄筋コンクリート造(RC造)がオススメです。
鉄筋コンクリート造(RC造)であれば、自分はもちろん、近隣の生活音も響きにくい上に、耐震性にも優れているため、地震による影響や被害の不安も最小限に抑えられます。
家賃を抑えたいなら木造
できるだけ家賃を抑えたいという方には、木造住宅がオススメです。
木造住宅は、原材料である木のコストが安く、工期も短いので、鉄筋コンクリート造(RC造)に比べて家賃が安くなります。
構造上、耐震性を心配する方も多いと思いますが、建築基準法の改正後の住宅であれば、震度6強〜7程度の地震での倒壊・崩壊はありません。
また、震度5強程度の地震であれば、建物の機能を保つことができるので、耐震性を過剰に心配する必要はありません。
木造住宅は、通気性が良く高温多湿な日本に最も適している構造です。
家賃も安く抑えることができ、固定費が下がる点は大きな魅力です。
賃貸の鉄骨造(S造)とは?
ここまで、木造と鉄筋コンクリート造(RC造)について詳しく解説してきました。
実は、賃貸住宅の構造は大きく分けると以下の4種類あります。
- 木造
- 鉄筋コンクリート造(RC造)
- 鉄骨造(S造)
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
次に、鉄骨造(S造)について解説します。
賃貸の鉄骨造(S造)とは、梁や柱などの骨組みに鉄骨を用いた建物のことです。
構造欄にはSteelの頭文字を取って「S造」と書かれることもあります。
この鉄骨造(S造)は、使用する鋼材の厚さによって分けられており、以下の2種類があります。
- 軽量鉄骨造
- 重量鉄骨造
一つずつ解説します。
軽量鉄骨造
軽量鉄骨造は、鋼材の厚さが6mm未満のもので、主に低層の物件で用いられることが多いです。
軽量鉄骨造は、事前にパーツを工場で生産するため、安定した品質を大量生産することができ、工期も短くなります。
そのため、人件費や建築コストも抑えることができ、家賃相場が安くなる傾向にあります。
また、軽量鉄骨造の「軽さ」は「しなやかさ」でもあり、地震などの揺れでも鉄骨が折れにくく、建物への影響を小さく抑えることができます。
ただし、軽量とはいえ鉄骨のため、通気性が悪く結露が発生しやすいので、こまめに喚起する必要があります。
加えて鋼材が薄いため、防音性や耐久性が低くなることも理解しておかなければなりません。
重量鉄骨造
重量鉄骨造は、鋼材の厚さが6mm以上のもので、主に中〜高低層の物件で用いられることが多いです。
軽量鉄骨に比べると柱や梁が太い重量鉄骨は、軽量鉄骨よりも少ない本数で骨組みを作ることができるため、広い空間を作ることができます。
設計の自由度が高く、柱と柱の間隔も広く取れるため、開放的な吹き抜けをつくることも可能です。
また、厚みがある鋼材が使われている分、壁も厚くなるため防音性が高くなります。騒音問題を回避できることは大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、鉄の価格は重さが基準になるため、重量鉄骨は軽量鉄骨に比べて建築コストがかかります。
そのため、家賃も高くなる傾向にあることを理解しておきましょう。
賃貸の鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)の違い
残りの1種類、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)について解説する前に、鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)の違いを比較します。
賃貸住宅における鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)の違いは、以下のとおりです。
鉄筋コンクリート造(RC造) | 鉄骨造(S造) | |
---|---|---|
原材料 | 鉄筋+コンクリート | 鉄 |
耐震性 | 高い | 普通 |
耐火性 | 高い | 低い |
防音性 | 高い | 低い |
気密性 | 高い | 高い |
上記のように、鉄筋コンクリート造(RC造)は、全ての項目において高い機能性を発揮しています。
ただし、気密性が良いということは通気性が悪いということなので、結露やカビが発生しやすくなります。
そのため、意識的に換気や除湿等の対策をオススメします。
また、鉄骨造(S造)の耐震性は、鉄筋コンクリート造(RC造)よりは劣りますが、木造よりは高くなります。
賃貸の鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)とは?
では残りの1種類、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)について詳しく解説します。
賃貸の鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)とは、鉄筋コンクリート造(RC造)と鉄骨造(S造)を組み合わせた構造のことです。
鉄筋コンクリート造(RC造)に加え、支柱となる鉄骨を組み合わせて、コンクリートを隙間に流し込みます。
鉄筋コンクリート造(RC造)の耐久性と鉄骨造(S造)のしなやかさを兼ね備えた構造で、高層ビルやタワーマンションなどの建築も可能になります。
ただし、上層階の軽量化を測るために、コンクリートは土台の低層階のみにしか流し込まないケースもあります。
鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、耐震性や耐久性は申し分ありません。
ですが、大規模な工事が必要なため、高層建築物以外ではほとんど使用されない工法です。
【最後に】賃貸住宅では木造マンションも増えている!
今回は、賃貸住宅の構造について解説しました。賃貸住宅の構造は、大きく分けて以下の4種類あることが理解できたと思います。
- 木造
- 鉄筋コンクリート造(RC造)
- 鉄骨造(S造)
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)
古くから、日本の住宅で最も馴染みのある構造といえば木造住宅で、鉄筋・鉄骨系の住宅が増えてきた現在も変わりません。
木造は、その構造上2階以下の建物が多く建てられてきたため、「木造=アパート」という認識の方が多いと思います。
ですが、建築基準法の改正や技術の向上により、木造建築物の耐火性や耐震性が上昇したことで、木造でも安全な中高層マンションの建築が可能になりました。
まだまだ数は少ないですが、木造マンションも増えているので、自分に合った構造の物件を探してみてください。