賃貸物件に入居するには、連帯保証人がいないと契約ができません。
しかし、昨今の高齢化や外国人の移住によって連帯保証人を頼める人がいないという方が多くなりました。
「連帯保証人がいないから部屋を借りられない」と賃貸契約を諦めている方も中にはいるかもしれません。
ですが、実は保証人がいなくてもお部屋を借りる方法があります。
そこで今回は、賃貸住宅における連帯保証人が必要な理由と保証人が居なくても賃貸契約ができる方法、家賃保証会社の加入について解説します。
賃貸住宅に保証人が必要な理由
一般的に賃貸物件を契約する際は、保証人もしくは連帯保証人が必要です。
保証人が必要な理由を2つのポイントにまとめました。まずは以下の2つの理由を理解しましょう。
- 家賃滞納時に入居者の代わりに家賃を請求するため
- 損害賠償を入居者の代わりに請求するため
家賃滞納時に入居者の代わりに家賃を請求するため
入居者が家賃を支払わない場合、貸主(大家さん)は保証人に家賃を請求できます。
大家さんは家賃収入を基に物件を維持しているので、入居者に家賃を滞納されると物件を維持することができません。
万が一、入居者に夜逃げなどをされた場合は、保証人もしくは連帯保証人に家賃を請求することができます。
損害賠償を入居者の代わりに請求するため
入居者は、退去時に賃貸物件の原状回復を行う義務があります。
原状回復とは居室を入居前の状態に戻すことです。
例えば、居室に汚損がないようにきれいな状態にすることや、湯沸器やエアコンなどの故障がない状態で貸主に返すことです。
万が一、備品の破損や居室の汚損がある状態で退去する場合は、貸主に弁償費用を支払う義務があります。
貸主は入居者が弁償費用が払えないと判断した場合、連帯保証人にも請求できます。
保証人と連帯保証人の違いについて
保証人と連帯保証人には違いがあり、貸主は特に連帯保証人を立てることを求めます。
なぜ、貸主は保証人ではなく、連帯保証人にこだわる必要があるのでしょうか。
まずは、保証人と連帯保証人の違いを説明します。
保証人と連帯保証人の違い
保証人は貸主から家賃の立て替えを求められた際に、まず入居者本人に請求するように主張できます。
しかし、連帯保証人は本人に申し出ることを主張することができません。
連帯保証人は、入居者本人と同等の責任を負うことになります。
入居者に請求するように主張する権利を民法では「抗弁権」と言います。
保証人は抗弁権が認められていますが、連帯保証人は抗弁権を認められていません。
また、保証人が複数いる場合は、債務(滞納家賃など)の分割を主張することができる「分割権」がありますが、連帯保証人は分割権がないので、一人で債務を負うことになります。
連帯保証人は責任の重さが大きい
連帯保証人の責任は重く、保証人のように請求に対して拒否する権利や分割を主張する権利がありません。
その結果、入居者のすべての損害賠償などの責任を全て負うことになります。
責任が重いこともあり、連帯保証人を頼むのも親族に限られてしまいます。しかし、近くに親族がいない人や家庭の事情で親族に頼れない方もいます。
知人に連帯保証人を頼むことも法的に問題はありませんが、人間関係に支障を起こす可能性があるのでオススメできません。
そして、連帯保証人になる方も役割とリスクを理解することが必要です。
他人の不始末に対して、確実に金銭的に保証ができる収入や資産がないと連帯保証人になるのは難しいです。
民法改正により連帯保証人の責任範囲が限られる
2017年に民法改正がされ、連帯保証人の責任の範囲が明確になりました。
改正前は、連帯保証人は貸主に対して、入居者と連帯して「本契約から生じる一切の債務を負担する。本契約が更新された場合も同様とする。」などと記載されているだけでした。
さらに、賃貸借契約書には連帯保証人の責任の範囲や保証すべき限度額などについても明記する必要がありませんでした。
しかし、近年、連帯保証人が負う金銭リスクが高く、トラブルの多発が問題視されており、2017年に民法改正によって、連帯保証人に関する契約に極度額の設定がされました。
また、連帯保証人の責任を負う範囲も定められ、範囲を超える責任を負う必要がなくなりました。
ここで、より深く理解できるように、連帯保証人に関して以下の3つのポイントにまとめました。
- 極度額が設定される
- 極度額の明記がない連帯契約は認められない
- 入居者の情報を連帯保証人に情報開示する義務
極度額が設定される
極度額とは、連帯保証人が補償する上限金額です。
明記の例として「極度額は100万円とする」や「極度額は契約締結時における賃料及び共益費の2か月分」など、具体的に保証する金額が明記されます。
極度額の設定の明確な基準は決まっていないので、連帯保証人と入居者と貸主の3者でどのくらいまで保証できるのかを話し合います。
また、国土交通省が民法改正に伴う極度額の設定の参考資料を発表しました。平均的な限度額の設定は下記の通りです。
家賃 | 極度額の平均 |
---|---|
家賃4万円以下 | 17.7万円 |
家賃4〜8万円未満 | 28.2万円 |
家賃8〜12万円未満 | 50万円 |
家賃12〜16万円未満 | 71.2万円 |
家賃16〜20万円未満 | 97.3万円 |
家賃20~30万円未満 | 126.2万円 |
家賃30~40万円未満 | 156.8万円 |
家賃40万円以上 | 437.3万円 |
一人暮らしの金額帯に多い家賃で4万〜8万円未満で30万近くの極度額が多い傾向にあります。
貸主と極度額を決める時には、このような資料を参照しながら金額を決めていくことになります。
極度額の明記がない連帯契約は認められない
連帯保証人の責任の範囲は「債務の元本」「債務に関する利息」「違約金」「損害賠償」「その他に発生する債務」と定められました。
賃貸契約における債務とは家賃や物件の器物などが該当します。
連帯保証人を立てる際は、極度額の明記がないと契約上認められません。
また、責任範囲も上記の範囲だけです。明確な責任範囲が定まったことにより、連帯保証人が負うリスクが限定的になったと言えます。
入居者の情報を連帯保証人に情報開示する義務
入居者は、連帯保証人になる人に収入額と財産の額、負債額(ローンの借入情報など)を情報開示する義務があります。
改正前は入居者の情報開示の義務がなかったので、連帯保証人が負うリスクが大きいことを知らずにトラブルになるケースがありました。
このような問題を防ぐために、入居者の情報開示が義務化されました。
入居者が連帯保証人に情報開示を怠った場合は、契約が無効になる可能性もあります。
トラブルを防ぐためにも、必ず連帯保証人への情報開示をしっかり行いましょう。
連帯保証人がいなくても賃貸住宅を契約する方法
連帯保証人の責任の範囲が限定されても、誰かに連帯保証人を頼むのは気が引けるという方もいると思います。
実は、連帯保証人を立てなくても賃貸契約ができる方法があります。
近年、少子高齢化や外国人の増加に伴い、オーナー側が家賃保証会社を使うことが多くなりました。
そして、保証人不要の物件、クレジットカードで家賃を支払うことで保証人不要となる物件も出ています。
ここでは、保証人なしで賃貸契約をする以下の3つの方法について解説します。
- 家賃保証会社を活用する
- 保証人不要の物件を探す
- クレジットカードで家賃を支払う
家賃保証会社を活用する
家賃保証は、家賃滞納があった際に貸主に費用を補償するサービスです。
近年では不動産オーナーが、入居者が集まるように活用することもあります。
家賃保証会社の特徴や加入方法について解説します。
家賃保証会社の役割
家賃保証会社は、入居者の家賃が滞納しているときなどに、貸主に家賃を保証する会社です。
まさに、連帯保証人の役割を担います。
家賃の他にも原状回復費用、短期退去違約金、訴訟費用、残存物撤去費用を保証する会社もあります。
家賃保証会社の加入方法
家賃保証会社への加入は、貸主もしくは物件の管理会社が指定した保証会社に加入します。
ただし、不動産会社が複数の保証会社と取引している場合があり、その場合は数社から選ぶことができます。
加入方法は、本人確認資料(運転免許証もしくは健康保険証)と収入がわかる資料(源泉徴収票と確定申告の写し)を提出して申込みます。
家賃保証会社に提出する書類
- 本人確認資料(運転免許証、健康保険証)
- 収入がわかる資料(会社員:源泉徴収票 自営業:確定申告の写しもしくは所得証明書)
- 在籍証明書(家賃保証会社から求められた場合。健康保険証で在籍がわかる場合が多い)
家賃保証を活用するには審査が必要
家賃保証を活用するには、審査が必要になります。
審査基準は会社によって異なりますが、第一条件となる審査基準は安定的に収入があることです。
その他の基準は、下記の通りです。
会社員
- 勤務先
- 年収
- 勤続年数(3年以上が目安)
- 雇用形態(雇用形態が業務委託契約の方は自営業に該当します)
自営業
- 職業
- 年収(所得証明書が必要な場合があります)
- 銀行預金の残高(求められる場合があります)
また、家賃保証会社によって以下のような審査が行われます。
クレジット会社系家賃保証会社の審査
- クレジットカードの延滞状況
- 月々の支払いが期日までに支払われているか
家賃保証会社の審査
- 以前に保証会社を利用した際の家賃の滞納歴と強制退去歴
クレジットカードを作るときと同じ要領で審査を行い、審査の結果がわかるまで2〜7営業日かかります。
万が一、物件で指定された保証会社の審査に落ちた場合は、別の物件を探さなければなりません。
審査に落ちても、別の保証会社で契約できるというケースもあります。
なので、諦めずに不動産会社に保証会社について相談してみましょう。
家賃保証の保証料
家賃保証の保証料は、保証会社や保証内容によって異なります。
一般的に、保証料は家賃の50%〜100%もしくは2ヵ月分で、保証期間は2年間の会社が多いです。
支払時期は、物件契約時と更新時に支払います。
家賃保証会社を利用する上でやってはいけないこと
家賃保証会社の審査をする時に絶対にやってはいけないことは、クレジットカードやローンの支払いの延滞です。
家賃保証を利用する際には、審査があると解説しました。
勤務状況の他にも、ローンやクレジットカードの延滞状況も審査の基準になる会社もあります。
お金の借入状況を管理する情報を個人信用情報と言い、クレジットカード会社と金融機関が加盟している信用機関で、クレジットカードの支払いが遅れた場合や未納の情報が登録されます。
万が一、個人信用情報に延滞や滞納の記録があると、家賃保証会社の審査に通らないことがあるので気をつけましょう。
保証人不要の物件を探す
家賃保証会社への加入について解説しましたが、そもそも保証人不要の物件を探す方法もあります。
保証人不要の物件は、UR都市機構や公社の物件に多いです。
そして、不動産ポータルサイトで保証人不要物件を検索することもできます。
注意点は、入居前審査が厳しい点と物件に何かしらの問題があるケースがあります。
例えば、立地が悪く入居が決まりにくい、建物の取り壊しが決まっている、事故物件など、訳がある物件の場合もあります。
なので、事前に不動産会社に保証人不要の理由を聞くようにしてください。
クレジットカードで家賃を支払う
クレジットカードで家賃を支払う事で、保証人が不要になる物件もあります。
クレジットカードを持っている方は、信用がある人とみなされます。また、クレジットカードは安定的な収入がないと保有することができません。
最近では、多くの物件検索サイトでカード支払い可能物件を探すことができます。
デメリットは、家賃と一緒に支払い手数料が数%徴収されることです。
ですが、家賃をカード支払いにした場合、かなりのポイントが貯まります。手数料の半分くらいが還元されるので、ポイ活をしている方にもオススメです。
まとめ
今回は、連帯保証人がいない場合の賃貸契約について解説しました。
近年、親の高齢化や外国人の移住により連帯保証人を頼めない方が増えてきました。また、連帯保証人を立てることに気が引けるという方も少なくないと思います。
その場合、家賃保証会社の活用や保証人不要物件、家賃のクレジットカード払いなど様々な方法があるので、賃貸物件を選ぶ際にこれらの条件で探してみてください。
また、家賃保証会社は家賃滞納があった際に家賃分を大家さんに保証する会社ですが、加入にも審査が必要になります。
審査は保証会社によって基準が異なりますが、安定的な収入とカードやローンの支払いに延滞情報がないかを見て判断されるので、これらのポイントを理解しておきましょう。
賃貸物件を借りる際に連帯保証人について悩む人は多くいると思いますが、連帯保証人を立てずに借りる方法として本記事が参考になれば幸いです。