名義変更とは、賃貸借契約書の記載した名義人(契約者)の氏名を変更することです。
名義変更には以下の2つのケースがあり、手続き方法や費用、必要書類等はそれぞれ異なります。
- 氏名をそのままスライドするだけで済むケース
- 新たに契約を結び直す再契約・新規契約のケース
そこで、今回は賃貸契約の名義変更についてケース別に詳しく解説します。
また、名義変更を怠った時のリスクもあわせてご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
賃貸契約の名義変更とは?
賃貸契約における名義変更とは、賃貸借契約書の記載した名義人(契約者)の氏名を変更することです。
賃貸借契約書とは、大家さん(貸主)と借りる人(借主)の間で交わす契約書のことをいいます。
この契約書は、契約をする上で最も効力を持つ書類で、賃貸の条件に関する項目などが書かれています。
その内容は不動産会社、大家さん、物件によって異なり、ここに記載されている契約者の名義を変更することを「名義変更」といいます。
ただし、賃貸契約の名義変更をすると言っても、単に氏名を変えるだけでは済まないケースもあります。
その際は、新たに名義人となる人が審査を受け、再契約や新規契約といった形になることも覚えておきましょう。
再契約や新規契約が必要なケースは後術しますので、まずは名義変更のみで対応できるケースについて解説していきます。
賃貸で名義変更のみで対応できる2つのケース
賃貸契約で名義変更のみで対応できるケースとは、契約者自体は同一人物で氏名だけが変わった場合です。
それは以下のような場合が考えられます。
- 結婚などで氏名が変わった場合
- 契約している法人名が変わった場合
結婚などで氏名が変わった場合
結婚などによって、夫・妻どちらかの苗字が変わった場合は、賃貸契約の名義を変更しなければなりません。
この場合は、契約者本人は変わらず契約者の氏名が変わるだけなので、名義変更で対応できます。
たとえば、妻の苗字が変わり妻名義の賃貸物件に住み続ける場合などが挙げられます。
なお、名義変更を怠るとトラブルの原因になることもあるので注意が必要です。
契約している法人名が変わった場合
契約している法人名が変更になった場合も名義変更をしなければなりません。
たとえば、会社の事務所として賃貸物件を利用している場合、名義人を法人名にしていることは少なくありません。
そのため、法人名を変更した時は名義変更をする必要があります。
手続きを怠ると、家賃の引き落としや各種手続きがスムーズに進まない可能性があるため注意が必要です。
名義変更を怠るとリスクが伴います。たとえ契約者自体が同じでも、氏名が変わったら速やかに管理会社や大家さんなどへ連絡をしましょう。
次に、上記のような名義変更ができないケースをみていきます。
賃貸の名義変更ではなく再契約・新規契約になる4つのケース
賃貸契約において名義変更ができない場合は、再契約や新規契約が必要になります。
再契約・新規契約になるケースは下記の4つのジャンルに分かれます。
- 夫婦
- 家族
- 友人
- 会社
賃貸の名義変更|夫婦
夫婦関係で再契約や新規契約が必要なのは、死別や離別の時に名義が変わる場合です。
たとえば、名義人である夫が死別、または離別で住み続けることができない家に妻が引き続き住む場合は、名義人を妻に変更しなければなりません。
この場合、妻は改めて審査を受けなければならないので、一度契約を解除し「再契約・新規契約」を結ぶ形になります。
ただし、妻の収入状況などによっては、審査に落ちてしまうこともあるでしょう。また、審査に通った際は、敷金や礼金などの初期費用も発生するので注意してください。
なお、管理会社や大家さんによっては、事務手数料のみで名義変更に応じてくれるケースもありますので、まずは相談してみましょう。
賃貸の名義変更|家族
家族間で入れ替わる場合にも、再契約・新規契約を結ぶケースが多いです。
主なケースとしては、
- 子供の就職を機に親から子供へ名義変更したい時
- 兄弟が入れ替わりで入居したい時
などが挙げられます。
いずれも社会人で収入を得ている場合、支払い能力が異なりますので、家賃を滞納せず支払えるかどうかを審査する必要があります。
貸主からすれば、たとえ親子・兄弟であっても別人に貸すことになります。そのため、一般的には一旦解除して再契約・新規契約するケースが多いようです。
ただし、解除する必要があるのか、名義変更だけで済むのかは、管理会社や大家さんによって異なります。
まずは名義変更したい旨を伝え、手続き方法を確認しましょう。
賃貸の名義変更|友人
友人の場合は以下のケースが考えられ、再契約・新規契約が必要となります。
- 知人や友人から部屋を引き継ぐ
- ルームシェアの契約者が退去する
知人や友人から部屋を引き継ぐ場合、再契約・新規契約が必要です。
貸主にとってあなたの知人・友人は見ず知らずの方です。そのため、一旦契約を解除し新たに審査する必要があります。
ルームシェアで契約者が退去する場合も同様です。
引き続き住み続ける人の中から新たな名義人を選び、再契約・新規契約を結びましょう。改めて審査する必要があります。
なお、名義人は変わらず同居人が入れ替わる場合は、管理会社や大家さんに連絡してください。賃貸借契約書の中に、同居人の氏名を明記する必要があります。
賃貸の名義変更|会社
会社の場合、下記のようなケースは再契約・新規契約が必要となります。
- 法人から個人に名義変更したい
- 会社から家賃補助を受けたい
法人から個人に名義変更したい場合考えられるのは、会社で借り上げていた物件が倒産、または転職や退職しても住み続けるケースです。
この場合、契約者自体は変わりませんが法人契約を一旦解除し、再契約・新規契約を結ぶことが多いです。
また、会社の家賃補助を受ける場合は、補助を受ける人と契約者が同一人物である必要があります。
たとえば、妻名義の賃貸物件で夫の会社の家賃補助を受けたい場合は、夫の名義に変更しなければなりません。
同一世帯内とはいえ契約者が変わるため、再契約・新規契約を結ぶことになります。
賃貸の名義変更の手続き方法と必要書類
ここまで、賃貸の名義変更や再契約・新規契約になるケースを解説してきました。
では、これらの手続きはどのようにすればスムーズにできるのでしょうか。次は手続き方法と必要書類について説明します。
賃貸契約における名義変更の手続き方法と必要書類は、下記のケースによって異なります。
- 名義変更のみ
- 再契約・新規契約
それぞれのケースについてみていきましょう。
名義変更のみ
名義変更のみの手続きの流れは以下の通りです。
- 管理会社へ連絡、来店日時を決める
- 必要書類を準備、管理会社へ行く
- 管理会社にて変更契約、覚書等へ記入する
以上が、賃貸物件における名義変更の主な流れとなります。
なお、一般的な必要書類は次の通りです。
- 本人確認書類(運転免許証や住民票など)
- 収入証明書(給与明細書、源泉徴収票、確定申告書など)
- 在籍証明書
必要書類は上記の通りですが、管理会社や大家さんによって必要書類は異なります。事前に確認して準備をしておきましょう。
再契約・新規契約
再契約・新規契約とは、現時点の賃貸借契約を解除し、審査を経て、再契約・新規契約することです。
再契約・新規契約の手続きの流れは以下の通りです。
- 管理会社へ連絡、来店日時を決める
- 契約解除または再契約の必要書類を準備、管理会社へ行く
- 管理会社にて現在の契約を解除、再契約の申込みを行う
- 大家さん、家賃保証会社、管理会社が審査する
- 審査に通ったら、重要事項説明を受け、契約する
- 家賃などを入金する
③のフローでは、来店時に解除と申込を一度に行います。
先に申込みだけしてしまうと、二重契約とみなされ保証会社の審査が通らなくなってしまう可能性があります。
なお、一般的な必要書類は次の通りです。
- 顔写真つきの本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
- 住民票
- 印鑑と印鑑証明
- 収入証明
- 連帯保証人の住民票
再契約・新規契約時の必要書類も、管理会社や大家さんによって異なるため、事前に確認しておきましょう。
賃貸の名義変更にかかる費用
では次に、賃貸契約における名義変更にかかる費用について確認していきます。
賃貸契約における名義変更にかかる費用は1万円前後〜家賃1ヶ月分かかる場合もあり、管理会社や大家さんによって千差万別です。
名義変更をする場合は、契約書等を最初から作り直すことになり、事務手数料が発生するのが一般的です。
これらの金額は、契約書や重要事項説明書に記載されていることがほとんどなので、一度確認してみるとよいでしょう。
万が一、契約書や重要事項説明書が見つからない場合は、直接管理会社や大家さんに連絡してください。
ただし、名義変更の費用は、仲介手数料のように業法で上限が決められているものではありません。
そのため、中には無料にする管理会社や大家さんもいるようなので、一度相談してみてもよいでしょう。
賃貸の再契約・新規契約で費用は発生する?
賃貸における名義変更では手数料のみ費用が発生することがわかりました。
では、再契約・新規契約の場合は、どのような費用が発生するのでしょうか。早速みていきましょう。
賃貸契約における再契約・新規契約で発生する費用は、敷金や礼金・仲介手数料などですが、これらは管理会社や大家さんによって判断が異なります。
それぞれ解説していきます。
敷金・礼金
敷金では以下の2つのケースが考えられます。
- そのままスライド
- 改めて預ける
敷金をそのままスライドする場合は、現在の契約者の敷金を返却せず、次の契約者の敷金にするケースです。つまり、敷金を持ち越すということです。
この場合、退去時も次の契約者に返却されます。
預けている敷金は、次の契約者にあげるということなので、知人友人よりは親子や兄弟などの家族間の場合が多いようです。
敷金を改めて大家さんへ預ける場合は、現在の契約者の敷金はそのまま返却し、次の契約者が改めて敷金を預けるケースです。
また、再契約・新規契約ということは、新たに審査を受ける必要のある別の契約のため、礼金も基本的には発生すると認識しておきましょう。
仲介手数料
仲介手数料とは、賃貸物件を紹介してくれた不動産会社に、取引を成立させてくれた対価として支払う手数料のことです。
そのため、大家さんと直接契約をしない限り、管理会社が間に入るケースがほとんどなので、仲介手数料は発生すると認識しておきましょう。
ただし、管理会社に直接契約を申し込む場合は、仲介手数料が不要なケースが多いです。
なお、仲介手数料については、契約書や重要事項説明書に記載されています。また、仲介手数料の上限金額は家賃の0.5ヶ月分です。
再契約・新規契約は、その時点でリセットされるので、新たに初期費用が発生するのが一般的です。
ですが、管理会社や大家さんによって対応は様々なので、まずは相談してみるとよいでしょう。
賃貸の名義変更にかかる期間
ここまでで、賃貸契約における名義変更の手順、必要書類、費用がわかりました。
では次に、名義変更にかかる期間を解説していきます。
賃貸契約の名義変更にかかる期間は、申込みから1〜2ヶ月程度が目安ですが、ケースによって名義変更にかかる期間は異なります。
必要書類が不備なく揃っている時で1ヶ月程度、提出書類に不備があった場合や、大家さんや家賃保証会社の審査などに時間がかかると2ヶ月程度かかるでしょう。
賃貸契約における名義変更は費用も期間もかかりますし、様々な手続きが必要です。
たとえスムーズに進んだとしても、申込みから完了までの期間は1ヶ月程度はかかるため、早めに動くことをオススメします。
なお、お急ぎの際は事前に管理会社へ完了までの目安の期間を確認しましょう。その上で、希望の期限までに手続きが完了できないか相談してみてください。
賃貸の名義貸しは違法行為!
賃貸契約の名義変更は労力を要します。そのため、バレなければ名義変更は必要ないと考える方もいることでしょう。
ですが、これは「名義貸し」という立派な違法行為でリスクを伴います。
まずは、名義貸しという違法行為が発生してしまう原因について解説します。
名義貸しが発生する原因
賃貸契約の際に、他人に自分の名義を貸す行為を「名義貸し」と言います。
名義貸しは法的には、管理会社や大家さんに無断で物件を転貸した(又貸し)と評価され、契約解除や退去を命じられる場合があります。
では、なぜ名義貸しという違法行為が発生してしまうのでしょうか。
それは以下のようなケースが考えられます。
- 入居審査に落ちる可能性がある、または落ちた
- 同棲解消後、名義人ではない方が住み続けている
このような場合、家族や知人・恋人などの名義を借りて審査に臨むケースが多いようです。
ですが、これは立派な違法行為です。発覚した時に責任を追求されるのは名義を貸した側なので、身内であっても名義貸しに関してはよく考えたほうよいでしょう。
では次に、名義貸しをしたときに発生するリスクについてみていきましょう。
賃貸の名義貸しにおける3つのリスク
名義貸しをおこなうと以下のようなリスクを伴います。
- 家賃を滞納した時の督促
- 設備を壊した時の弁済
- 退去する際の退去と原状回復の費用
これら全てが書類上の契約者である名義人にくることになり、金銭トラブルは免れません。
また、生活スタイルによっては、騒音トラブルに巻き込まれることもあるでしょう。
名義貸しは大家さんを騙す行為です。
大家さんにとっては書類上の名義人と契約したことになるので、その部屋で何か問題が起こった場合、全て名義人が起こしたも同然ということになります。
そのため、大家さんに名義貸しが発覚すると、違約金が発生したり退去を命じられる場合があることを覚えておきましょう。
【最後に】賃貸の名義変更をする際は管理会社に相談しよう
今回は、賃貸契約における名義変更について解説してきました。
名義変更は、単に氏名を変更するケースと再契約・新規契約を結び直すケースに分かれます。
ご自身がどちらのケースに当てはまるのか判断できない場合は、速やかに管理会社や大家さんに相談しましょう。
管理会社や大家さんがわからない際は、賃貸借契約書を確認してください。管理会社または大家さんの連絡先が記載されています。
また、名義変更は、管理会社は電話だけでなくWEBで申し込みができる場合もあります。
スムーズに手続きを進めるためにも、まずは一度問い合わせをし、必要書類などについて確認してみてください。