賃貸のお部屋の壁に画鋲やピンを使って、アートや収納棚を取り付けたいけど、ピンや画鋲を使っても大丈夫なのか、気になっている方は多くいると思います。
また、壁紙に画鋲を刺して穴が目立ったことで、賃貸の退去時に修繕費用を請求された経験がある方もいるでしょう。
賃貸の壁のピン刺しについては、トラブルの原因になることもあるので、設置する前にきちんとルールを理解しておく必要があります。
そこで本記事では、賃貸物件における壁のピン使用や穴あけ行為に対する対処法、さらに賃貸物件で使える穴が目立たないおすすめ貼付グッズをご紹介します。
賃貸の壁にピンを使用しても良いのか？
2020年に民法改正が行われ、賃貸物件の退去に関する原状回復ガイドラインが制定されました。
また、その中にはピンの使用について記載されています。
原状回復ガイドラインでは、ピンや画鋲は通常使用として貸主負担とされていますが、ビスや釘で穴を開けると入居者の原状回復義務の対象となり、修繕費用を請求されます。
しかし、壁紙に穴あけや傷つける加工を行うことを禁止する物件もあるので、契約の際にはピンや画鋲の使用の有無を確かめることが重要です。
また、入居する前に見つけた壁紙の傷や穴は、必ず写真を撮って記録に残し、大家さんや管理会社の方に共有するようにしましょう。
賃貸の壁にピンや画鋲を使用する際のルール確認方法
賃貸物件で壁にピンや画鋲を使用したり、ビスで穴を開けても良いのかは、物件によって不明確です。
契約書上、ピンの使用は禁止と記載されていないにも関わらず、大家さんから注意されたということも少なくありません。
そこで次に、賃貸物件での穴あけ行為のルールについて、原状回復ガイドラインと賃貸借契約書を踏まえて解説します。
原状回復ガイドラインを確認
2020年に民法が改正され、国土交通省から「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が制定されました。
原状回復ガイドラインは、通常使用や経年劣化によって、破損もしくは汚損に関する修繕費用負担について記載されています。
ピンや画鋲の使用について、原状回復ガイドラインにおける壁の修繕分担表の一部をご紹介します。
【賃貸人（貸主）の負担となるもの】
- テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ（いわゆる電気ヤケ）
- 壁に貼ったポスターや絵画の跡
- 壁等の画鋲、ピン等の穴（下地ボードの張替えは不要な程度のもの）
- エアコン（賃借人所有）設置による壁のビス穴、跡
- クロスの変色（日照などの自然現象によるもの）
【賃借人（入居者）の負担となるもの】
- 賃借人が日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ（使用後の手入れが悪く、ススや油が付着している場合）
- 賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ（賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合）
- クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
- タバコ等のヤニ・臭い（喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合）
- 壁等のくぎ穴、ビス穴（重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの）
- 賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡
- 落書き等の故意による毀損
原状回復ガイドラインによると、ピンの使用については、壁の下地ボードの張り替えの有無によって入居者負担かどうか判断されます。
ピンや画鋲の使用による穴は、下地ボードの張り替えが基本不要なので、賃貸人が修繕負担することになり、ビスや釘の穴は下地ボードの貼り替えが必要なので、入居者の負担になります。
退去時に壁の穴や傷跡で不当に修繕費用を請求された場合は、原状回復ガイドラインで負担の必要があるか確認しましょう。
賃貸借契約書で確認
原状回復ガイドラインで、ピンや画鋲の使用は貸主負担として認められているものの、賃貸借契約書で完全禁止している場合もあります。
このような物件の場合は、原状回復ガイドラインがあっても、契約書に記載されていれば従う必要があります。
そのような物件は、賃貸契約の重要事項説明を行う際に、特記事項にピンを含めた穴あけ行為を禁止するという記載と説明があります。
入居中に契約事項のことを忘れて、間違えて壁に穴を開けたと言うことがないように注意しましょう。
直接大家さんに相談して確認
契約書や重要事項説明書に記載がない場合、大家さんや管理会社に直接相談することも推奨します。
本来は、不動産業者が契約前の重要事項の説明を行う際に説明する必要がありますが、入居中にルールを覚えていないこともあります。
退去時に修繕費用を請求されないようにするためにも、ピンの使用前には必ず相談しましょう。
賃貸物件の壁の傷や穴あけ行為に関する許容範囲
原状回復ガイドラインでは、壁の傷や穴あけ行為についての明確な基準が制定されていますが、その許容範囲についても事前に知っておくことで判断がしやすくなります。
次に、賃貸物件の壁の穴の種類や大きさに関する許容範囲について解説します。
壁の傷や穴あけ行為に関する許容範囲について、わかりやすく3つのパターンに分けました。
- ピン・画鋲
- ビス・くぎ
- 1cm以上の大きな穴
それぞれ順に解説するので、参考にしてください。
ピン・画鋲
下地ボードの張り替えを必要としないピンや画鋲の穴は、通常使用と見なされ、大家さんが負担することになります。
万が一、ピンや画鋲の使用で穴が大きく目立ってしまった場合は、放置やパテなどで勝手に修繕せずに、大家さんや管理会社の方に相談するようにしましょう。
場合によっては、現地で立会って修繕してくれる可能性もあります。
動画サイトでは、原状回復の動画がありますが、勝手な修繕は費用請求される可能性もあるのでおすすめできません。
自分で判断せず、大家さんに相談することをおすすめします。
ビス・くぎ
ビスや釘を使って壁に穴を開けた場合、下地ボードの張りかえが必要になるので、入居者が修繕費用を負担します。
ビスや釘の使用した場所によりますが、修繕費用は5,000円〜1万円以内が相場です。
ビスや釘などの深い穴を開ける場合は、必ず大家さんに相談してから使用することを推奨します。
費用を請求されない例外なケースは、エアコンの設置など、生活上必要とされる取付工事による穴あけ行為です。
このような場合は、大家さんや管理会社が負担にすることになります。
1cm以上の大きな穴
ピンやビスでもない1cm以上の大きな穴をあけた場合は、入居者が修繕費用を負担します。
修繕費用は、穴の大きさによりますが、費用は5,000円〜5万円以上になります。
しかし、1cm以上の穴を開けてしまった事例としては、特殊な器具を使って穴を開けたケースや、壁を蹴って穴を開けてしまったケースがほとんどです。
壁に大きな穴をあけてしまうと、穴が大きくなり、害虫が侵入する可能性もあります。
開けてしまった穴は放置せずに、大家さんや管理会社の方に必ず相談することをおすすめします。
誤って壁に穴を開けた場合の対策
何かしらのアクシデントで壁に穴をあけてしまった場合も、原状回復義務として修繕費用を弁済する必要があります。
ですが、賃貸の設備を破損させてしまった場合でも、火災保険で費用の補償が可能です。
火災保険を請求できる条件は、下記の通りです。
-
不慮の事故にによる破損
家具などが突然壁に当たって穴が開いた、転んでぶつかって穴が開いた、強風などの飛来物が室内に入り壁に穴を開けたなど - 借家人賠償責任保険が付保されている
火災保険で保険金を請求する場合は、保険代理店もしくは保険会社に連絡して請求手続きを行います。
保険金の請求手続きは、損害保険鑑定人が現地で調査を行うケースと、現場の写真と穴を開けた修繕費用の請求書または見積書を提出するケースがあります。
請求手続きの資料を参考にして、保険金の支払額が決まるので、まずは保険会社に相談するようにしましょう。
賃貸の壁を傷つけないピンと貼付アイテム
ピンは使っても問題ないことは理解できたけど、なるべく穴を目立たなくしたいと思っている方も多くいます。
そんな方には、穴が目立ちにくいアイテムや跡がつきにくいテープが最適です。
そこで次に、賃貸物件で問題なく使えるピンやテープなどのおすすめアイテムをご紹介します。
【+d】ニンジャピン 15P
| 価格（税込） | 1,100円 |
|---|---|
| サイズ | 直径 7×高さ 21mm |
| 商品詳細 | 素材：アクリル/ステンレス 数量：15個 |
NINJAピンは針部分がV字型になっており、使用した跡が目立たないのが特徴です。
アートや掲示物の設置に人気で、凹凸のある壁紙で使用するとどこに刺したのかわからないほど、使用跡が残りにくいと好評です。
Amazonや楽天などの通販サイトで販売されています。
【無印良品】針が細い画鋲
| 価格（税込） | 190円 |
|---|---|
| サイズ | 高さ 18mm |
| 商品詳細 | 素材：ポリスチレン/ステンレス 数量：12個 |
針部分が細くてピンの穴が目立たないので、とても人気の商品です。
全国の無印良品やネットショップで購入することができます。
ポスターなどの紙の掲示物には適していますが、重量のある掲示物の場合は安定性を保つために何本か刺す必要があります。
掲示物によって向き不向きがありますが、ピンの穴を目立たせない便利グッズとしておすすめです。
【コクヨ】何度も使えるソフト接着剤 ひっつき虫
| 価格（税込） | 407円 |
|---|---|
| サイズ | 縦 10.5×横 11×厚 3.5mm |
| 商品詳細 | 素材：合成ゴム 数量：55個 |
ポスターを壁に貼るために、まるめたガムテープや両面テープを使用する方も多いですが、剥がした跡に壁紙が剥がれたり、テープの糊で跡がつきます。
コクヨのひっつき虫は粘着力が強く、剥がしてもテープ跡が残りにくいので、壁紙を剥がしたりする心配がありません。
ポスター掲示だけでなく、軽めの作り棚の設置にも使用可能です。
【壁美人】石膏ボード用固定金具時計フック
| 価格（税込） | 945円 |
|---|---|
| サイズ | 幅 36×高さ 700×厚さ 3.5mm |
| 商品詳細 | 素材：ABS樹脂 数量：2個 |
壁美人はホッチキスで取り付け可能な石膏ボード用の壁掛金具です。
設置器具の種類も豊富で、作り棚の取り付けができるサイズから大きなTVが設置できるサイズまで揃っています。
ホッチキスの針はピンや画鋲よりも細く、穴が目立ちにくいので壁紙を傷つけたくない方に最適です。
【3M】コマンド壁掛け粘着フック
| 価格（税込） | 990円 |
|---|---|
| サイズ | 幅 2×奥行 5.5×高さ 9.5cm |
| 商品詳細 | 素材：紙 数量：5個 |
取り外す際に壁にベタつきや傷を残さないコマンドフックです。
フックと壁紙保護シート付粘着タブが別々なので、フックを貼り付ける際も位置をずらすことなく正確に設置することができます。
注意点は、ビスや釘より耐重量が少ないので、重いものや複数のものをかけるとフックが外れて、穴を大きくする原因になります。
設置したフックには、軽量のものを掛けるように心がけましょう。
賃貸物件の壁にピンを使う時の注意点
壁の穴が目立たないピンや便利な設置器具の紹介をしましたが、使用する前の注意点があります。
ここでは、以下の3つの注意点を解説します。
- 何度も同じ場所に刺さない
- 重量が重いものをかけない
- 壁以外の場所で使用しない
1. 何度も同じ場所に刺さない
壁の穴が目立たないピンやテープを使用する場合でも、何度も同じ場所に刺さないようにしましょう。
同じ場所に何度もピンを刺すと、穴や傷が目立たない便利グッズを使っていても穴が広がる原因になります。
さらに壁紙にも刺した跡が目立ってしまい、壁紙の取り替え費用を請求される可能性もあります。
なので、ピンを刺す場所はできるだけ違う場所に刺すことを心がけましょう。
2. 重量が重いものをかけない
ピンで固定して取り付けたフックの耐重量は1〜10Kgの商品が多いので、重さのあるものや複数のものを掛けると落下します。
ピンやテープで固定したフックが重さに耐えられず落下すると、穴が大きく広がり、壁紙が剥がれる可能性もあります。
フックを設置する前には、規定の耐重量を確認してからピンやテープで固定するようにしましょう。
3. 壁以外の場所で使用しない
ピンの使用は、ドアやふすまなどの壁以外の使用は禁止されている物件が多いです。
とくにドアやふすまはピンを刺すと刺した跡がはっきり残りやすく、とても目立ちます。
壁以外の場所でピンをしようした場合、退去時に部材の交換料として費用を請求される可能性もあります。
退去時の思わぬ原状回復費用の請求を防ぐ為にも、壁以外の場所ではピンやテープを使用しないようにしましょう。
まとめ
今回は賃貸物件の壁に穴を開けたときの対処法とピンやビスについての使用について紹介しました。
賃貸物件の壁へのピンの使用は、入居者の原状回復義務にはなりませんが、同じ穴に何度も刺さない、壁以外の場所で使用しないなど、穴が目立たないように使用することが大切です。
そして、原状回復ガイドラインによると、ビスや釘は壁の下地部分を取り替えるので、修繕費用は入居者の負担になってしまいます。
また、物件によっては穴あけ行為自体を禁止している場合もあるので、必ず契約上のルールを守ることが重要です。
さらに、壁に傷や穴をつけたくない方は、賃貸の壁に傷をつけないシートタイプのものなど、便利グッズを使用することをおすすめします。
賃貸物件でアートやインテリアを楽しみたい方は、これらの内容を参考にしてお部屋時間を楽しみましょう。
